瑠璃ひとひら

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──運転手付きのリムジンの後部座席で、富樫が親しげに話しかけてくる。 「先生が通ってくださる様になって本当によかった。叔父が璃桜を養女に欲しいと言うくらい可愛がってましてね。前々からカウンセラーを付けろとうるさかったんですよ」  作り笑顔で応える僕に、やけに上機嫌な彼は尚も続ける。 「叔父は世話好きで、私の仕事上もよく便宜を図ってくれるものですから無下にもできなくて。あ、ほらその運転手の彼も、叔父の紹介なんです」  富樫の視線の先で、まだ少年のような若い運転手がハンドルを握っている。  するとその運転手の後姿が、前部座席からせり上がってきた黒い仕切り板のような物に遮られてしまった。  見ると富樫が座席の傍らで、何かのボタンを操作している。 「これでこちらの様子は見えませんし、運転手に話を聞かれる心配もありません。……先生、璃桜は他人の死の場面が視えてしまう力の事をあなたに話しましたか?」 「あ……はい、それならちょうど今日。その幻覚はおそらく、夢ででも見た場面が偶然お父さんの亡くなった状況と一致して……」 「蒼介先生」  僕の見解が柔らかな声に制された。
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