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次の日もその次の日も、足しげく僕は富樫家に通った。
カウンセリングと称して璃桜からこの家の細かな情報を聞き出す為に。
富樫の先代と陸、璃桜兄妹に血の繋がりがない事は調べがついている。
先代は生涯妻を娶る事なく、最初に十五歳の陸、その三年後に当時十歳の璃桜を養護施設から養子に迎え入れていた。
(さらに四年後……先代は事故死。他にも多数、富樫家の関係者が死に、今は陸が名実共に富樫組を取り仕切っている……)
偶然か必然か、それを探る為に僕はこの富樫家に入り込んだのだった。
「璃桜さん。ここに来る途中、河原の桜がとても綺麗でしたよ。……今日は僕と、散歩がてら行ってみない?」
怯えたように肩を震わせ、璃桜が息を飲む。
「本当にね、綺麗だったんだ。あれを見たら君の気持ちも少し軽くなりそうな気がして」
事実、僕は臨床心理士の資格を持っている。
何の因果かそんな資格とは無縁の職場を選んでしまったが、それが無ければ心療カウンセラーとしてこの家に潜り込むのは不可能だった。
そして、璃桜に出会う事も出来なかっただろう。
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