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おれも、本物を見て、努力すれば、もっと綺麗な刺繍が刺せるようになるだろうか…。
おれの視線に気づいて、たもっちゃんがにっこりと笑った。
大丈夫だよ。
そう言われた気がして、嬉しかった。
おれの独りよがりかもしれないケド。
「ほら、廉くんも食べて、ねーえ、絶対、つばめに見えないわよね」
…つばめだったのか、手裏剣かと思った!
「いただきます」
「上仙堂さんね、跡取り息子が、帰ってきたのよ。和菓子屋さんなんて嫌だって、家を出てサラリーマンしていたのが、心変わりして戻ってきてね…」
「姉さんの幼馴染みなんだよね、たっちゃん。俺もチビの頃は、よく遊んでもらった」
「今じゃ、並んだら、あっちの方がチビよね」
たもっちゃんが、菓子にかぶりつきながら、クックッ、と忍び笑いをした。
「ああ、そうだ、照光寺の紫陽花…昔、たっちゃんに連れて行ってもらったっけ、見事なんだ、梅雨になったら、見に行こうよ」
「えっ?」
たもっちゃんは、嬉しそうにおれの刺繍を指差しながら言った。
「本物見た方がいいよ、それは、可愛すぎだろう」
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