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倉庫の中で、理子を優しく抱きしめた。
唇にキスをしてから、首すじに降りていく。衣ずれの音を聞きながら、おれは自分の異変に気づいた。
なんか、全然その気にならない。
「…廉?」
理子は敏感にそれに気づき、おれの顔を覗きこむ。
「ごめん…」
一瞬、自分が言ったのかと思った。理子は言葉を続ける。
「ごめん、さっさと此処から逃げたくせに、嫌なことあると勝手に来て、廉にすがるなんて…」
「いや、そんなこと…」
おれの言葉を全部聞かずに、理子は静かに体を離した。
手早く、おれが第三ボタンまで外したブラウスの前を整え始める。
制服、似合っているな、と場違いな事が頭に浮かんだ。
倉庫の明かりは点けていなかったけれど、上に設えられた窓から、外灯の明かりが入ってきて、姿は分かる。
外を通った車のヘッドライトが上向きになったのか、一瞬部屋の中が明るくなり、理子の頬についた涙の痕がはっきりと照らし出された。
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