一人では生きていけないって、わかっていた

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 理子が出て行ったとたん、倉庫がしん、として室内の温度が低くなった気がする。 窓の下にもたれて座っていると、下の園庭でチビどもが走り回っている声がする。  少し青臭い匂いがした。  いつもは理子が持って帰って捨ててくれる、事後処理したティッシュを入れたレジ袋が、口を開けたまま転がっている。  うわっ、やばい。  おれは慌てて口をきつく縛ると、ジーンズの尻ポッケにねじり込んだ。 手の中のゴムの感触が気持ち悪く、軽く眉をひそめた。  さよなら、理子。  初めては、おれが14で理子が17だった。養護施設で一緒に育って、恋愛感情なんてなかった。  ただ、お互い淋しくて、快感よりも、人の温もりが欲しくて、どちらからともなく誘って、抱き合った。  暖かかった。  一緒にいて、肌に触れて、キスをして…。  でも、それだけだ。  理子は高校を卒業して、就職して、この養護施設を出ていく。  おれとの関係も、卒業だ。  思い切り伸びをして、閉めきったままの窓から空を見上げる。  小さな鳥が飛んでいた。  おれも、取り合えず次に行かなきゃ。  
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