一人では生きていけないって、わかっていた

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 おれを見つけた神社の神主は、大慌てで警察に届けた。  楠木の根元に捨てられていたから、姓は楠木、めったにない捨て子だから、名前は廉…市役所の職員がつけた、と小1の時に教えられた。    自分の名前調べってやつだ。  自分の名前の由来を、お父さん、お母さんに聞いて、名前を書けるようになりましょう。  物心ついてから、ずっとおれの家は養護施設だったから、小学校で、それが普通じゃないことを知ったときは驚いた。  クラス全員、別の養護施設に住んでいると思っていたから。  まだ、新米の先生だったのかな?  なんで止めなかったんだろう。  おれは出席番号一番で、得意気に養護施設の先生から教えられた由来を披露した…そして、世界が一変した。    やだな。  入学式の朝、バサーで職員の人が見つけてくれた、古着にしては程度のいいブレザーに袖を通しながら思った。  久しぶりに、昔の夢を見た。 「おーっ!廉、似合うな」  施設の玄関を出ようとしたら、園長先生がニコニコしながら声を掛けてくる。  
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