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「実は、あんた宛に葬儀のハガキを出したんだが、なにぶん、こちらも混乱していたもんで、その……どうやら、智が大学の時に住んでいた住所を書き込んでしまったんです。気がついたのは全て終わったあとでね。郵便物を整理していたら、宛先不明で戻ってきていたんですよ」
「……」
さすが、智のおじいさん。
「……っぷ」
大声で笑った私は、大声で泣いた。
智のおじいさんはオロオロと、私の頭を不器用に撫で始めた。
ゴツゴツ節ばった大きな手は。
とても、とても、温かかった。
「すまんかったね。実は、あんたに何度も連絡を取ろうとしたんだが……その、なんと連絡を取ったらいいものかわからなくてね。智の遺品が届いた時も、礼をせなと思ったんだが。ただ、あんたはまだ若いから、迷惑になるんじゃないかとも考えてね」
相手のことを思うあまり口下手になってしまうところも、智と同じ。
温かい何かが、じんわりと溢れてくる。
おじいさんは「すまんかったね」を連発した。
言葉は、しみじみと私の全身を巡っていく。
柔らかな日差しが、ぽかぽかと私たちを包んでいた。
私の涙が落ち着くと、おじいさんは「もう一杯お茶はいかがかね」と微笑んだ。
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