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「ごめん、佐倉」 「ん?」 「昼飯、食いはぐったんじゃ……」 「ああ……そうだね。じゃあ、今から外に付き合ってよ」 腕から手を離して、そのまま階段を下りていく。 手早く定食を出してくれる、はす向かいの小さな食堂なら、今からでもなんとか昼休みが終わるまでに食事ができるだろう。 一瞬気まずそうな顔をした君は、黙って僕のあとをついてくる。 「佐倉」 階段を降りきって、階段室を出る直前に、君は思いつめたような声で僕を呼び止めた。 「何?」 「変なことに巻き込んで、ごめん」 足をとめて、少し考える。 そっとしておくべきかとも思っていた。 だって推察される事柄はとてもデリケートで、聞きだしたときに自分の手に負えなくなるんじゃないかって、そんな気がしたから。 けれど菊地は違うのかもしれない。 もう自分だけで抱えているのは、辛いのかもしれないと、思い当たったんだ。 あのさあ、と振り返ったら、途方に暮れたような顔が見えて、ため息が出た。 「東さん、なんで菊地に絡んでんの? 仕事のことがあるにしても、しつこくない?」 菊地はうつむいて小さな声で言った。 「東さんは、俺のこと……俺と中田さんのこと知っているから」 「菊地と中田さんって? 付き合ってでもいたの?」 菊地は俯いて、こくんと小さな子供みたいにうなずいた。
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