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「東さんは、それも気に食わなかったんだ?」 「きもいから関わりたくないらしいよ」 「ふ…ん」 そういっていびりでもしていたのかな。 関わりたくないというなら徹底すればいいのに、迷惑な人だな。 「中田さん、だいぶ前に転職したよね。今もつきあってんの?」 ふるふると今度は首が振られた。 別れて転職したのか、転職したから別れたのか。 どっちにしろ、今はつきあっていないらしい。 「引く?」 「引かない……けど、気になるから聞いていい?」 「いいよ」 「菊地は、男が好きなの?」 「多分、どっちかっていうと、そう。でも、普通の人と同じだよ。男なら誰でもいいわけじゃない。中田さんだから、好きになった」 小さな声だったけれど、きっぱりとしていた。 「ふぅ……ん。まあ、恋愛なんてそんなもんだよね。趣味とか好みより、好きになっちゃった事実優先ていうかさあ……うん、いいんじゃない」 これだけ言い切れるんなら、大丈夫だろう。 僕は階段室を出るドアに手をかけた。 「それだけ?」 ものすごく驚いたような声で、菊地が問いかけてきた。 「他に何か?」 「気持ち悪くないのか?」 「なんで? 僕だって、誰かを好きになるよ、きっと。それは気持ち悪いことじゃないだろ?」 そう問い返したら、君はホッとしたような力が抜けたような顔で、笑って言った。 「いや……ありがとう」
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