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最終近くの電車を降りる。
僕はそれほど飲んではいないけれど、君は少しだけ足元が怪しくなってる。
歩きながら時々触れ合う肩があたたかくて、我慢できなくなってしまうじゃないか、なんて思う。
だって、ねえ、知っていた?
君は最近とても視線を集めているんだよ。
今夜も何人の『誘いたい』って視線を遮って、一緒に電車に乗ったことか……気がついていないだろう?
そうだね、僕は少しばかり焦ったのかもしれない。
君が次に誰かを好きになって、僕から離れて、誰が見てもわかるくらい影響を受けるようになるほどに心を傾けるのを見るのが怖くて。
ほろ酔い加減で肩を並べて、最寄駅から歩いている、そんなときについにこぼれてしまった。
気持ちを告げたのは、こっちから。
「あの、さ……好き、なんだ……」
君は足をとめて僕を見る。
ああ。
君が答えをためらった。
理由なんて、慮るまでもなかった。
失敗した。
グルグルと一瞬のうちに思考が廻る。
緊張なのか酒なのか、熱が引いてみれば酔った頭でさえもわかる。
深く考えなくったって、素面ならわかったはずのこと。
同性なんだから。
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