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新入社員の仕事だと、花見の場所取りをさせられた。
桜満開の公園、君と二人で地面にひかれたござに座る。
風が吹いて、花弁が舞った。
公園の向こう、入学式帰りの親子連れが通る。
「いい天気。桜満開で入学式日和だね」
君はそういって、僕の髪にひっかかった花弁をつまみあげた。
「そうか?」
「そう思わない?」
「桜は卒業式の印象なんだよね」
僕の通っていたのは中高一貫の私立校。
植えられていたのは彼岸桜で、満開は卒業式シーズンだった。
そこらに植わっているのとは違う。
「これは、ソメイヨシノだから」
「へ? 桜じゃないの?」
「どちらも桜だよ。僕がいうのは彼岸桜。ここにあるのはソメイヨシノ」
僕の説明に、君は目を丸くして上を見ていた。
明るい空と白い花が、目に眩しい昼下がり。
ただの同期の君と、少し近くなった。
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