『記録の本をロードしますか?』

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「いやいや……あり得なくね?ここで俺一人でこいつ倒せとか……無理ゲーもいいところだぞ!」 それは勇者ギザが思わずそう言ってしまうくらいの、かつてない大ピンチだった。 戦士に魔術師、召喚士にハンターに僧侶……バランス良く揃えたはずの彼の仲間達は、瀕死状態になっていたのである。 しかし、彼の目の前に居る中ボスレベルの敵……ヴァンパイアベア(吸血鬼の特徴を持つ巨大グマ)はほぼ無傷の状態だ。 そのうえ、お前が最後かというように赤い瞳でギザのことを睨んでいる。 こんな時こそ、勇者の本領発揮! 神とか精霊とかに与えられた人外の力を使って一発逆転……がセオリーなのだが。 なにせ、この勇者…… 「お、落ち着け!ちょ、ちょっと話し合うぜ!お前が俺を倒しても経験値はゴマ粒ぐらいしかもらえないからな?お、俺なんか倒す価値も無いヘボ勇者だからな!」 自分で自分をヘボ扱いするくらい弱いのである。 なぜかというと、魔王の呪いでレベルが1から上がらなくなってしまったのだ! なので、今までの敵との戦い方も…… 「ギザ!回復薬をテラに!」 「お、おう、ちょい待ち三秒……あった!行くぜ?回・復・薬!」 「……ギザ?解毒薬をディゼルに」 「げ、解毒薬?まだ残っていたっけ……あっ、良かったぜ!一つ残っていた!解・毒・薬!」 ……という感じで、もっぱら仲間の補佐をしていて勇者らしい働きは全くといっていいほど無かったのである。 もはや、勇者というよりは、勇者達に守られる村人Aといったところだった。 「は、腹減ってるのか?バッグの中に何かあったかな……クマといったら蜂蜜か?蜂蜜は無えから……ほ、干し芋でどうだ?」 「グオオオオ!」 お前は阿呆かというように唸り声を上げたヴァンパイアベアに対し、ダメと引きつった笑みを浮かべてギザはゆっくりと後退る。 (蘇生薬は切れてるし……回復薬じゃ、瀕死は治せねえし……爆弾系は使い切ったし……あれ?どう考えても、これって死亡フラグじゃね?) 勇者的にはヘボだが頭はそこまで悪くないギザかそう悟った時 「ウガアアアッ!!」 「いや、ちょっ……ストップストップ!美味しくないから!俺なんて、筋肉だらけで硬くて食べられないから!うわああっ!?」 痺れを切らしたらしいヴァンパイアベアがギザに襲いかかった!
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