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反転して逃げようとしたギザだが、ヴァンパイアベアに鋭い爪の付いた両前足で掴まれ、立派に尖った歯を右肩に突き立てられて、ここに彼の物語は潰える……。
ー記録の本をロードしますか?ー
深い闇で眠るギザの頭の中に、誰かの声が聞こえた。
ー『はい』か『YES』でお答え下さいー
(それ……実質、一択だろ)
謎の声にツッコミながら、ギザは声にならない声で答える。
(……"YES")
その瞬間、暗い空間に眩いばかりの光が満ちた……。
「……ザ。ギザ!」
「……っ!?はあっ……はあっ……」
誰かに揺り起こされて、ギザは文字通り飛び起きる。
額から流れ落ちる大量の汗の冷たさを感じながら、ギザが辺りを見回すとそこは森の中で太陽の光が指す数少ない場所だった。
「えっ?ここは……?俺、死んで……ない?」
「何、バカなことを言ってるのよ?死んでたら、今ここに存在してないでしょ」
「いくら暖かくて気持ちがいいからって、森の中で熟睡ってのは危ないよ?まあ、僕達が付いてるから安心なのはわかるけどさ」
キョトンとした表情で訊くギザに、呆れているような表情で答える戦士テラと魔術師ディゼル。
「本当、自分は呑気やなあ。勇者の自覚あるん?」
「いじめちゃダメですよぅ、マリナさん。ギザは見た目によらず傷付きやすいんですからぁ」
「……とか言いながら、一番毒舌なのはリーアじゃないのか?」
両手を腰に当てて首を傾げる僧侶マリナを窘める召喚士リーアに、ハンターのライズがぼそっと呟く。
酷いですぅ、とリーアはにこにこ笑った顔のまま、ぶぅと頬を膨らませた。
勇者一行の普段通りの平和なやり取り。
それを見たギザは、ようやくホッと安堵の息をついた。
「ふう……ギリギリセーフだったな。いや、ギリギリアウトだったのか?まあ、どっちでもいいや……全員、無事だったんだし」
「……さっきから、何変なことを言ってるのよ、ギザ?頭でも打った?」
「ギザはいつでも変ですよぉ?」
「変じゃねえよ!てか、それはお前には言われたくねえし、リーア!」
召喚士リーアに怒るギザに、それはいいが……とハンターのライズが話題を変える。
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