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「いや、良くねえし!」
「これからどうするかを話していたんだったな。森の入り口まで戻って記録の本を書くか、このまま進んで中ボスまで倒してから記録の本を書くか」
「そんなの、相談するまでも無いじゃないの。戻る時間が持ったい無いわ。このまま進んで……」
「戻る!絶対戻って記録の本を書いた方がいいに決まってるだろ!」
戦士テラの言葉をギザが大声で遮る。
その並々ならぬ迫力に驚いて、全員が彼を見た。
「自分……どうしたん?一番弱いくせに、いつもどんどん進みたがるんは自分やん」
「そうですよぉ。なんか今日のギザはいつにも増して変ですよぉ?」
「ああっ、この際もう変人扱いも喜んで受けてやる!だから、頼む……戻って記録の本を書かせてくれ!」
この通りだと土下座までしたギザを、信じられないというような表情で眺める仲間達。
しばらくの間、全員無言だったが
「……ギザがここまでするのなら、何か深い事情があるのかもしれない」
「あのプライドだけは人二倍ぐらい高いギザが土下座なんてね……僕、夢でも見てるのかな?」
「仕方ありませんねぇ……これ以上いじめて泣かれると困りますしぃ」
渋々といった顔で全員がギザの意見に同意してくれた。
ギザの表情がパアッと輝く。
「マジで!?じゃあ、戻ろうぜ!今すぐ!」
「もうっ、本当何なの?これは借りだからね!」
「自分なあ……ほんま、優しいうちらに感謝してなあ?」
ツンッとそっぽを向く戦士テラと、恩着せがましいセリフを吐く召喚士リーアにすら、ありがとうと殊勝な態度で礼を言うギザ。
(良かった……これで最悪の展開は免れる!戻って記録の本にページを付け足して、何ならレベル上げもしてくれば一石二鳥だぜ!)
そう喜びながら、ギザが先に立って森の入り口の方へ戻ろうとしたその時。
「きゃああ!?誰かー!!」
森の奥から女性の声が響いてきた。
「今のは……」
「悲鳴よね!?助けに行きましょう!」
「ああ、記録の本はその後でも書けるからな」
「えっ……ちょっ、待てって!行ったらダメだって!!」
ギザは必死に止めようとしたが、レベル1の彼の力では平均レベル50の彼らを止めることはできない。
仲間達はあっという間に森の奥へと姿を消してしまう。
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