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わたしには、お兄ちゃんがいました。
とても怖くて、みんなから嫌われていたお兄ちゃん。
お兄ちゃんは、生まれたときからとても元気で、興奮するといつも家中を走り回ってました。
元気すぎで、おもちゃや本をすぐ壊したり、破ったりしました。
ぬいぐるみなんか、綿を出しちゃうのでとても大変です。
そしてお兄ちゃんは、とても怒りっぽいです。
頬ずりしただけで、ものすごく怒られたことがあります。
そのときの傷は、とても痛かったです。
その怒りっぽさが、みんながお兄ちゃんを嫌いになった理由です。
すぐ怒って、怪我をさせる。
逃げようと背中を向けたら、すごい形相で追いかけてくる。
誰も好きになるわけありません。
さらに、お兄ちゃんは食い意地が張ってました。
いつの日か、わたしの弟がフライドチキンを落としたのですが、それをお兄ちゃんはすごい速さで口の中へ入れてしまいました。
まだ幼かった弟は、もちろん大泣きです。
まだ一口しか食べてなかったのに、と泣き叫んでいました。
大っ嫌い! と何度も叫んでました。
そんな様子を、お兄ちゃんはキョトンとして見ていました。
とんでもない奴です。
もちろん、そんなお兄ちゃんはいつも怒られていました。
ですが、怒られるたびに、お兄ちゃんのお母さんが、
「許してやって。」
とでも言うように、間に入ってくるのです。
そんな健気な姿に、怒る側は怒る気をなくしてしまいます。
お兄ちゃんのお母さんは、お兄ちゃんをとても可愛がっていました。
お兄ちゃんも、お兄ちゃんのお母さんを怒ることはしませんでした。
ですが、わたしが六歳のときに、お兄ちゃんのお母さんは死んでしまいます。
肝臓病でした。
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