ーCATー

5/6
前へ
/23ページ
次へ
翌日の朝、あたしは犬のいる家に訪れた。 あたしに気づいたのは、小さいお嬢さん。 おばさんと何か話して、外に出てきた。 上着を着て帽子を被って耳当てをして手袋をして、あたしを撫でる。 すっごい防寒だ。 人間にも毛皮があればいいのに。 どうやら、今日は家に入れてくれなさそうだ。 そのあと、お兄さんやお姉さんが起きて来て、一緒に撫でた。 まあ、これでもいっか。 ここに通い始めて数日すると、だんだん温かいものを出してくれるようになった。 柔らかい座布団に、もこもこの毛布、ぬくぬくできて温かい。 ああ、幸せ。 冬の間はここで寝るのが一番にゃ。 しばらく毎日通おっと。 さらに数日経つと、やっと家に上がらせてくれるようになった。 やっぱ外より温かい。 でもご飯はくれなかった。 美味しそうな匂いがしてあたしが食べようとすると、外に閉め出される。 ご飯が欲しくて通い詰めてたのに。 まあいっか、寝床も確保したし。 あの犬はというと、あたしに全然気づいてないようだった。 目が見えてにゃいんだろう。 この前見たときよりもだいぶ弱ってる。 今のこいつは、警戒しなくても平気だろう。 あたしはよくその犬にくっついて寝たりした。 でもくっついていると、犬が暴れて踏まれたり蹴られたりするから、距離を取るようにした。 この家はご飯をくれにゃいけど、夜になっても追い出さないし、何よりあの犬から頼まれているので、あたしは毎日訪れた。 いつものように外でないてみると、いつものようにお兄さんが窓を開けた。 いつもと違ったのは、お兄さんがないていたということ。 あたしの『なく』とお兄さんの『なく』は違う。 猫であるあたしは鳴くが、人間であるお兄さんは泣く。 苦しいから泣く。 辛いから泣く。 悲しいから泣く。 お兄さんが泣いていた理由は、家に上がってすぐにわかった。 この家の犬が、冷たく、硬くなっていたからだ。 ああ。 鳥が、立ち去った。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加