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あたしは犬に頼まれたことを果たした。
犬が死んで、悲しむこの家の人たちを、そっと癒してあげてた。
役目は果たしたけど、あたしはこの家を離れるわけにはいかにゃい。
あたしが来なくなったら、この家の人たちはまた悲しむことになるだろうし、何よりあたしの大切な寝床がなくなってしまう。
そんなわけで、あたしは春になってもここに通い続けてる。
この世界には、『虹の橋』と呼ばれるものがあるらしい。
誰かに愛されていた動物は、死ぬとそこへ行き、大切な人を待ち続ける。
大切な人を待ち続け、再開したとき、彼らは虹の橋を渡る。
あの犬は、もう虹の橋に着いただろう。
そして、この家の人たちを待ち続けてる。
あたしもきっと、虹の橋に行く。
必ず行く。
けど、誰を待てばいいのかにゃ?
愛されまくってたあたしは、たくさんの人を待たなくてはいけないのかにゃ?
まあ、それもいいけど。
少なくとも、あの偉い猫さんよりは恵まれている。
偉くなくとも恵まれている。
吾輩は猫である。
あの家で呼ばれてた名前はーー。
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