花色タバコ

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神代曙の花の色は、 私の売るタバコの箱によく似ている。 「すいませーん。すいませぇーん」 帳簿から顔を上げると、ウインドウケースの上にひょっこりと女の子の頭が見えた。 辛うじて見える両目がきらきらと黒く輝いている。 「これ! これくださーい!」 タバコを収めたウインドウケースがばんばんと音を立てている。 私は椅子から立ち上がり、 商品の受け渡しをする窓口まで歩いていった。 ひんやりと薄暗い店内へ、 晴れ渡った光と陽気が眩しく差し込んでくる。 小さな片手がケースの同じ場所を繰り返し叩いていた。 透明なアクリル板の向こうには、 濃い桜色をした一箱。 何を言われているのか少し考える。 タバコのケースをばんばん叩いて、 コレクダサイ。 「タバコ?」 「うん! これー!」
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