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「警察に詐欺で通報させてもらいますからね!」
ヒステリックに辻が喚き散らすと同時に、コンコンとノックする音が聞こえた。
「え?」
全員が驚いて入り口を見ると、開けっ放しのドアに一人の男が立っていた。
昨日肩を掴んで来た近衞という刑事だった。
「すいません。入り口の扉が開けっ放しで大きな声が聞こえたので」
この喧騒を全く気にせずに冷静な声音で彼は言った。
突然の乱入者に辻はポカンと口を開けている。
「な…なんであいつが…」
「お兄ちゃんあのイケメンと知り合いなの?」
「あ…いや…」
先日の爆弾事件のことは妹には心配するから話してなかった。
「先ほど通報すると言われていましたが、何かあったんですか?」
「な、何なんですかあなたは!部外者は黙ってて下さい!」
「私はこういうものですので何かご協力できるかと」
そう言って彼がスーツの胸ポケットから出したのはドラマなんかでよく見る警察手帳だ。
「け…警察!?」
辻はまさか本当に警察が現れるなんて思っていなかったのか、かなり動揺していた。
さっきのは怒りから出た言葉のあやで、さすがに死んだ夫の不貞と不倫相手に馬鹿にされた恥辱を警察に言うつもりはなかったようだ。
「あ~俺の鑑定に納得ができないから依頼の取り消しに来られただけなんですよ。ね、辻さん」
「え、えぇ…」
「じゃあ返金を…」
「…もう結構です。二度とこちらの事務所は利用しませんから!」
最後の最後にそう言い捨てて逃げる様に辻は近衞の脇を通って出て行ってしまった。バタンという大きな音が部屋に響いた。
「…悪い。邪魔をしたか?」
「いいや、クレーマー追い返してくれて助かったよ“刑事さん”」
頭を掻きながら夢路がそう答えると、近衞はピクリと片眉を上げた。
「んで?何の用?」
「ちょっとお兄ちゃん!お客さんを立たせたままで失礼でしょ。刑事さんどうぞ座ってください。コーヒーでいいですか?」
「どうもお構いなく」
路代がコーヒーを入れに席を外すと、近衞はソファーに座って路代が出て行った方を見た。
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