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「あの子もう二十歳だっけ?大きくなったな…」
路代の年齢を言い当てられ、夢路は動揺した。
「お前…何者なんだ?」
「…本当に覚えてないんだな俺のこと…」
「だから知らないって言ってるだろ」
「…そうか…‥ならいい…」
近衞はそれだけ呟くと俯いて黙り込んでしまった。気まずい沈黙が流れるが、夢路にはどう声をかければいいのか分からない。その沈黙を破ってくれたのは、コーヒーを持ってきた路代だった。
「どうぞ。ほら、お兄ちゃんも座りなよ」
夢路と路代が隣同士で近衞の対面のソファーに座ると、「改めて」と近衞は自己紹介を始めた。
「俺は警視庁刑事部捜査一課の近衞だ」
再び警察手帳を取り出して机の上に置いた。そこには彼の写真と『巡査部長』という階級の後に近衞斎と名前があった。
近衞斎…フルネームを見ても夢路の記憶にヒットする項目はない。
「へー警視庁の捜査一課ってドラマでよく出てきますよね!若いのにすごいんですねー」
「いや、最近異動になったばかりの新米だ。大したことないさ」
近衞はちらりと夢路に目線を向けてきたが、その顔は先ほどとは打って変わて無表情ともとれる真面目な顔つきになった。それを見て、夢路は近衞がどうやら昔話をしに来たのではないことに気づき、隣に座る妹に「悪いが席を外してくれ」と依頼をした。
路代は「えー」と不満そうな顔をしたが、二人の間に流れる不穏な空気を察して席を立った。
「じゃあ私は大学に行くから。ちゃんとさっきの仕事の続きしてよ」
「分かったって。気を付けてな」
夢路は妹に手を振って見送ると、近衞に対峙した。
「んで、そのエリート刑事さんが俺に何の用なんだ?」
「お前に捜査協力の依頼に来た」
はっきりとした声音で言った近衞の台詞に、
「はぁー??」
夢路は大きく目と口を開けて素っとん狂な声をあげた。
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