④ 鑑定

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「アイドルの悪口と爆弾のレッテル貼ったのは違うやつだな」 「どういう事だ?」 「アイドルに不満がある元々の紙袋の持ち主と、それに爆弾を入れたのは違うヤツってことだよ。お前が言う様に組織的かどうかまでは分からねぇけど、少なくとも二人の人間が絡んでるのは確かだな。あと、返報とABなんとかってのもその爆弾を入れた奴が貼ったレッテルだった」 「…‥なるほど…」 近衞は夢路が最初に書いたメモをじっと見つめて考え込んだ。 「どうせ犯人はそのアイドルに金費やしたファンとかじゃねぇの?」 「お前はこの水城杏(みずきあん)というアイドルのこと知ってるか?」 「いや。俺そういうのには興味ねーし。その子なんかあんの?」 「彼女は先週に週刊誌に共演俳優と熱愛報道をされてたんだ」 「あぁ~なるほど。それで裏切り者や嘘つきってか」 「まぁ写真集発売に合わせた話題作りという噂もあるが。彼女は写真集発売イベントの握手会を先週から各地で行っている。爆弾を入れられていた紙袋はそのイベントで写真集と同時に渡されているから所有者は数百人にのぼる」 「その中から犯人を探し出すのはなかなか骨が折れそうだな」 「いや、ブログで彼女のことではないかと疑われる殺害予告らしき書き込みをした男がいて、容疑者の一人に挙げられている。1週間前の別の写真集発売イベントで購入していることは特定できたが、彼は紙袋はもう捨てたと証言しているし、爆発事件が起きた時間にアリバイがある。彼があの紙袋の持ち主か確認は取れるか?」 「まぁそいつの持ち物でもあれば、レッテルが同じか鑑定できるけど」 普段は他人が貼ったレッテルの色なんてすぐ忘れてしまうが、さすがに爆弾犯のものだったので強烈に記憶に刻まれているから、見ればすぐに分かるはずだ。 「持ち物か…」 近衞は腕を組んで悩んだ後、「この後予定はあるのか?」と夢路に聞いて来た。「特にない」と夢路が答えると、「じゃあ行こう」とソファーから腰を上げた。
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