④ 鑑定

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  近衞の車に乗り込み、移動中の車内で事件の詳細についての報告書を渡されたので、夢路はそれを読んだ。 まず最初の爆発は立川市で今月の上旬に駐車場に停められていた車だった。最初は整備不良が疑われていたが、その車の持ち主が取引先に酷い経営をしていて廃業に追い込まれた会社も多く、恨みを持つ者の意図的な爆発である可能性が高くなった。 二度目の爆発はその1週間後国立市、最初は火災を疑われていた。しかし自宅には当時だれもおらず、新築のオール家電だったのでガス漏れの可能性もない。詳しく調べたところ外から爆発が起きキッチンの可燃物に着火して火災が広がったものだと分かった。その自宅の持ち主はパワハラで有名な商社マンだったので、恨みによる犯行だと疑われた。 そして、今回、3度目の秋葉原の爆発事件。 今までは目撃情報が出ない様に人がいない時間帯を狙ったものだと思われていたが、今回の被害でそれが違う可能性が出て来た。 この爆弾魔は人的被害が出るのを避けるのではないか。 爆弾の性能も高くはなく、1度目と2度目は引火しやすい物の近くに置いて大きな爆発を起こしただけで、もし夢路の避難警告がなかったとしても、人的被害は踊り場に人がいなければほぼなく、発煙によって爆破規模を大きく見せかけただけと結論付けられた。 まだ報道もされてない内部情報を部外者である自分に見せてもいいのかと夢路は呆れたが、近衞は捜査協力者や情報提供者に一部の情報を与えるのはよくあることだと平然と答えた。 一部どころか全部なんだが…と思ったものの、確かに情報があるに越したことはないのでそれ以上ツッコミは入れなかった。 「市・対象・目的が毎回違うから、爆弾を作成した人物と設置した人物がそれぞれ違うんじゃないかと俺は思っていたが…‥。とにかくその中の一人から爆弾を制作した主犯格の情報を持っている者を見つけ、司法取引をしたい」 「司法取引は共犯者の情報と引き換えにしか行えないのは分かったけど、もう上からの許可は下りてんのか?」 「爆弾事件は今の法令の適応対象だから公安委員会への申請は必要ない。特例措置以外にも捜査一課での司法取引案件はうちの係が捜査協力しているんだ」 今車はブログに殺害予告の書き込みをした男の職場に向かっていた。 「ってかお前って…」 「斎だ」 突然言葉を遮られて「え?」と夢路が聞き返す。
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