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そこは工場の駐車場だった。
「容疑者はここでアルバイトをしていてもうすぐ仕事が終わる時間だ」
数分後に玄関から男たちが数人出て来た。私服の男もいれば、作業着のままの男もいる。その中にさっきの捜査資料に写真のあった男がいた。
「すいません、ちょっといいですか?」
近衞が声をかけると、自転車を押して歩いて来たその男は明らかに嫌そうな顔をして「なんですか?」と足を止めた。太った体格と低い身長から明らかにこないだの帽子の男ではないことが分かった。
打ち合わせ通りに近衞が男に話しかけている間に、近くの車の影から夢路は首から下げているルーペを男にかざして視た。
『のろま。デブ。臭い。オタク。邪魔』
どうやら職場では嫌われ者らしく、彼の『作業服』には同僚たちの酷いレッテルが貼られていた。
さらに目を凝らしてレッテルを探すと、『藤原二郎。仕事。安月給。流れ作業』というのと、自転車にも同じく貼られた名前や自転車の色等のレッテルが貼られているのを見つけた。
それは持ち主本人が貼ったレッテルであり、爆弾の入っていた紙袋に貼られたのと同じものだった。
男の背後にいた夢路は近衞に目で合図をすると、近衞は頷き、「じゃあありがとうございました」と頭を下げて歩いて来た。
「どうだ?」
「あぁ、やっぱりあの紙袋はアイツのものだな」
夢路ははっきりと確信をもって答えた。
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