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同時刻。
同じく都内にて。
望月鑑定事務所という看板がかかったオフィスの一室で、ソファーに横になってテレビを見ている若い男性がいた。
彼の名前は望月夢路(もちづきゆめじ)。何を隠そうこの鑑定事務所は彼が立ち上げた事務所である。資金は資産家である彼の両親から援助を受けているが。
「へ~また爆発事件があったんだ。前は車で今回は民家か…。日本も物騒になったなぁ~」
テレビ画面には連続犯の犯行か!?というテロップが躍っている。
オフィスの固定電話が鳴り、部屋の奥のオフィス机に座っていた女性が電話に出た。
「はい、望月鑑定事務所です。はい?…あ~うちは不動産の鑑定は行ってないんですよ~すいません。え?あ、いや、損害保険の事故鑑定とも違います。うちは“物の価値”や“存在”を鑑定するんです。あ~鑑定団みたいなのとちょっと違うんですけど…まぁそんな感じだと思ってもらえれば…。はい、またご縁があればよろしくお願いします。失礼します」
ふぅ~とため息を吐きながら電話を切ると「もーまた間違い電話だったー」っとがっくりと肩を落とした。
「お兄ちゃんそんなテレビ見てていいの?もうすぐお客さん来ちゃうよ」
彼女の名前は望月路代(もちづきみちよ)。夢路の年の離れた妹である。
「今日のお客さんは何か訳アリで細かそうな人なんだから、気を付けてよね」
「へーへー。まぁ持ち込みで『価値鑑定』を希望する人間なんて訳アリな人間しかいねーだろ」
“鑑定事務所”と聞けば美術品の鑑定や事故などの鑑識を行う事務所を想像する人が多いだろうが、ここは違う。
事務所の看板にも『モノに残された思いを鑑定します』とキャッチコピーが書かれている。
「ってか、お前今日大学は?」
「今日は午後からの授業しかないから」
話しているとチャイムが鳴り、路代が「あっ来た!」と入り口の方に出迎えに行った。
夢路はソファーから身を起してテレビを消し、客を出迎えた。
「どうもいらっしゃいませー」
女性は夢路をみると微かに片眉を上げて不審そうな表情をした。
女性は目がキツく第一印象がいいとは言えない外見をしているが、着ている服や装飾品からそれなりに生活水準が高いのが見て取れた。おばさんというよりはマダムといった感じだ。だけど左手の薬指には指輪はなかった。
「あなたが鑑定士なの?」
高圧的な態度に夢路は苦笑いをしつつ「ええそうです」と答えた。
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