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夢路がエレベーターに乗って姿が消えると、看護師たちは奥にいる人にも声をかけてケーキの争奪戦が始まった。
「ほぼ毎日お見舞いに来るなんて甲斐甲斐しいわよね~」
「いつも望月さんが楽しそうに話しかける声が聞こえるし」
「ホントいいお兄さんだよねぇ」
「でも可愛い妹さんもいるけど、あの子はそんなに見かけなくない?」
「まぁ双子の弟なんだし普通の兄弟とは違うんじゃない?」
笑い声で盛り上がる中、一人の看護士が暗い顔をしていた。それは雪路の担当の松木だった。
「でも私…ちょっとあのお兄さん怖いっていうか…。こないだも弟さんのことで注意を受けたし…」
俯きながら言う彼女に、先輩たちはあぁ~っと顔を見合わせた。
「確かにちょっと弟さんに過保護っていうか…」
「担当引き継ぐ時に言ったでしょ。“あの部屋隠しカメラか盗聴器がある”って噂なんだから気を付けないって」
「そうそう、ちょっとしたミスでもすぐ指摘されるのよねぇ」
「まぁうちの院長が若い時にお世話になった名家の息子さんらしいから特別扱いだし仕方ないわよ」
「そうなんですか…」
松木はため息を深くつきながらも、ちゃっかりケーキを口に運んでいた。
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