⑤ 尋問

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  数日後。 近衞に呼び出され、夢路は事務所の前で彼を待っていた。近衞が車に乗って現れ、横付けした車に乗り込む。 「んで、なんか捜査の進展があったのか?」 「あぁ。夢路のおかげで交換殺人ならぬ、交換爆弾事件で捜査方針が決まった」 「え?あれって主犯格に爆弾を作ってもらって、恨みがある人や場所に仕掛けたってだけじゃねぇの?」 「握手会イベント当日はこないだ会った容疑者の藤原にはアリバイがある。だから別の誰かに爆弾を置く依頼をした可能性が高い」 「ん?あの“爆弾”ってレッテル貼ったのは爆弾を作った主犯格だと思ってたけど違うのか?」 「俺も最初はそう思っていた。依頼を受けた主犯格が爆弾を作成しそのまま仕掛けたのだと。だが、それだと目撃情報が一致しないんだ。最初の車の爆弾事件は目撃情報がないが、新居の火災事件は付近の住民の目撃情報で背の低く細い中年男性が捜査線上に浮かんだ。そして、車の爆弾事件の容疑者の一人に該当する外見の人間がいる。さらに、パワハラ上司の新居を爆発した事件の容疑者の中に、長身で細身の部下がいた。お前が書店で目撃した帽子の男に似てるだろ?」 「ってことは…主犯格が爆弾作って、依頼者達がそれぞれ別の人の目的場所に爆弾を置いてるってことなのか?」 「そうだ。被害者達が人間性に問題があり容疑者達が多いのもあって、アリバイがある彼らは早々に捜査上から外された。年齢もバラバラで共通点が一切ないから、共謀している可能性も低かったしな」 「そいつらの共通点ってなんかあったのか?」 「いや、まだそれは捜査中だ。だが、主犯格を介してではなく依頼者同士で連絡を取り合っている可能性が高い。その可能性が浮かんだのもお前が“紙袋に触れた人物が二人”いて、“持ち主と爆弾を置いた人物が違う”という情報のおかげだ」 紙袋は燃えて破片からは指紋が取れないので、鑑識でもそれは分からなかっただろうと近衞は続けた。
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