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「箸本さん。あなたに“爆発事件”について何点かお聞きしたいことがあるんですが、よろしいですか?」
「え、えぇ。私で捜査にご協力できることがあるのなら」
「“爆発事件当日”は何をされていました?」
「“先週の”水曜日は…えっと、自宅でゲームをしていました」
近衞はその返答に「ふっ」と笑った。
「友人と飲みに行かれていたと調書には書かれていますが?私は2週間前のあなたの上司の事件のことを聞いたのに、なぜ別の爆発事件のことを?」
「あ……」
箸本は自分が犯したミスに気付いたが、慌てて弁解した。
「最近ずっとニュースで秋葉原のことばっかりやっているのでつい…」
「その事件が先週の水曜日だとよく覚えてますね。毎日やっているから分からなくなりませんか?」
「だ、だから、ニュースでも先週の水曜日って何度も言ってたから…」
「どうして自分がその事件について聞かれると?そっちの爆発事件にも何か関係がおありなんですか?」
「それは…か、彼がここにいるから…」
それは自白に等しい発言だった。
「なぜ彼が秋葉原の事件関係者だと思ったんですか?事件関係者とは言いましたが、先週の事件とは一言も言ってないですよ」
「ぼ、僕は何も関係ないです!」
「ゆっくり話をお聞きしたいので、場所を変えましょう」
「そ…そんな…困ります!まだ仕事が残っていて――」
言い訳をする箸本が逃げない様に、近衞は彼のすぐ隣に立ち、上司に連絡をしていた。
一連のさまを見ていた夢路は、近衞の尋問テクニックにただただ感心していた。確信をつく質問や、質問攻めにして答えを考える暇を与えず発言を誘導する話術は、夢路の鑑定能力など必要とせずに犯人を見つけ出したのだ。
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