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「これは銀座の店舗で買われたものですね。プレゼント用に購入された時期は最近だ。確かにこのブランドやデザインは若者向けなのであなたは浮気相手への贈り物だと思っているみたいですけど、これは奥様への贈り物で間違いありませんよ」
「…亡くなったなんて一言も言ってないのに…」
信じられないものを見る目で辻は茫然と呟いた。
「ご主人は普段奥さんに何もしてあげれてない贖罪としてプレゼントをこっそり準備していたんでしょう。浮気を疑うなんて亡くなったご主人が可哀想ですよ。ご主人は突然亡くなられたんですね。事故か何かで?」
「え、えぇ。先週交通事故で無くなって…。遺品の整理で書斎の机の中に隠されるようにこれがあったので…私はてっきり若い女へのプレゼントだと…」
「以前から怪しまれていたんですね。そして死後に『確証』が出て居ても立っても居られずにうちに依頼をしてきた、と」
「はい…」
「ご安心ください。すべては奥さんの杞憂ですよ。どうぞこのネックレスをご主人からの最後のプレゼントだと思って大事にしてあげてください」
夢路が箱を返すと、辻はそれを両手で受け取った。
「そうですか…。主人に直接確認も取れないし…もう一生この疑惑は解決しないと思っていたのに…」
辻は鞄からハンカチを出して眼元の涙を拭いた。
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