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「はぁ…ここでやっと最後か……」
秋葉原のブックス書店の入り口に立った夢路は紙袋を2つ抱えていた。
「なんで漫画よりもオマケの方が重たいんだよ…」
今回の初版特典についているフィギュアは店舗によってもらえるキャラが違うらしく、弟の雪路はそれを集めたいらしい。
入院中で外出できない弟の我儘を聞くのも兄としての務めなので仕方ない。
夢路が店内に足を踏み入れると、店は人でごったかえしていた。
「すっげぇ人…まさかみんなこの漫画目当てか?」
なるべく人が少ない方へ歩いていくと、立て看板に女性のポスターと「アンちゃんの写真集購入イベント握手会はあちら」という矢印が書かれていた。
矢印の方角に目を向けると長蛇の列が。
どうやら別のイベントと重なった為に人が溢れているらしい。
「最近はなんでもオマケ商法なんだなぁ…。まぁCDでもそうか」
アイドルに興味もないのでさっさと目的の漫画をゲットすべく、「えーと漫画コーナーは2階か」と中央のエスカレーターを使って上がる。2階フロアは下と違って人はまばらだった。
レジで購入時にオマケを受け取り、再びエスカレーターで1階に降りると、どうやら握手会が始まったらしく、人がさらに通路を埋めていた為、わざわざ壁際を大回りして入り口を目指す。
非常階段のある所までくると、
「また雪路からか…」
脇に入り階段の1段目に袋を1つ置いてから、ズボンのポケットからスマホを出して耳にあてた。
「なんだよ…。あぁちゃんと買えたから安心しろって。信用ねぇなぁ俺」
細かく確認の電話を入れてくる弟の心配性振りに夢路は苦笑いをした。
「じゃあ今から持って行くから待ってろよ」
スマホをポケットに入れながら夢路が歩き出すと、その横を帽子を被って紙袋を持った男性が通り過ぎて上の階へ上がっていった。
「あっ」
夢路は数歩歩いた所で右手が空いているのに気付き、後ろを振り返ると非常階段に紙袋が置かれたままだった。
「あっぶねー。さっきの奴に持ってかれなくて良かったー」
慌てて戻り、紙袋を手に取る。
ふと階段の上に目がいった。
誰もいない階段の踊り場に紙袋が置いてあった。その袋は握手会を終えた人が持っていたのと同じものだ。
「あれ?あんなのさっきあったか?」
不審に思いながら、首からさげていたルーペを手に取って上にかざして踊り場の紙袋を視る。
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