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そうすると、彼には人が貼った“レッテル”が視える。
“レッテル”とはもともとはラベルと同じ意味である。最近では色眼鏡で見るという様な悪い意味合いで用いられることが多いが、本来は良くも悪くもない。
人がその物をどういうのもだと思っているかなど、その対象を見たり触れたりした人が貼った無意識の認識や評価が文字として視えるのだ。
まさに、貼られた“レッテル”が視えるのである。
『写真集。裏切者。返報。ブス。嘘つき女。爆弾、AB…‥』
その文字の中で一際違和感のある単語に手が止まる。
「は?爆弾……?」
脳裏にさっき見たニュースの映像が流れた。恐る恐る階段を上って紙袋の中を見る。中には箱があり、テープがはがされて箱の中が見えた。
―――爆弾。
時計のカウントは後15秒を切っていた。
「っ!マジかよっ!」
舌打ちすると同時に大きく息を吸い込みながら階段を駆け下りる。
「爆弾だ!皆離れろ!」
階段付近にいた人に大声で叫ぶと、皆一瞬「え?」という表情をした後、夢路が必死に走って逃げる姿を見た。
「階段に爆弾があるぞ!逃げろ!」
夢路の人目を惹く外見と必死さが冗談じゃないと伝わったのか、近くにいた他の客も「うわぁー!」と悲鳴を上げて走り出した。
そうすると一瞬で混乱は広がった。何が起こっているのかも分からない人も、とにかく人の流れに押されるように階段から離れていく。
――――ドガンっ!
爆発音と同時に煙と爆風が店内に広がった。火災報知器が鳴りだし、人の怒号と悲鳴を天井のスプリンクラーから噴き出した水が覆った。
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