0章

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 俺は昇降口の端で、ある奴と待ち合わせしている。俺の兄貴だ。まぁ1分離れて生まれた兄貴だけど。つまり、双子って訳だ。ただ、生まれた日がひどい。兄貴は4月1日生まれ。俺はその2日に生まれたんだ。生物的には双子だが、法律的には双子じゃない事になり、俺が1年で、兄貴は2年なのだ。面倒くさい。まぁ、その兄を待ってる間に俺の自己紹介をしよう。俺は酒衣輝央(さかごろもきおう)。好きな子と一緒にお風呂に入りたいと思う健全な男の子だ。あと、スポーツゲームは大好き。チート選手大好きです。 「おーい輝央、待ったか?」 輝「いや、待ってないよ。さっき来たばかり」  後ろからポンと肩を叩き、いつも聞いている声で話しかけられる。俺もいつも通りの返事を交わし、帰ろうぜと言う。こいつが双子の兄、酒衣浅頼(さかごろもあさより)。全員から愛され、文武両道、イケメン。ホントに俺の双子か?腹違いなんじゃないの? 輝「浅頼、今日って自転車じゃないの?」  いつもは自転車で登校するのだが、肝心の自転車を引いていない。 浅「昨日パンクして修理親に頼んだから今日歩きだよ」 輝「まじかよ。後ろに乗っけてもらう予定だったのに」 浅「仕方ねぇだろ。たまには歩きで帰ろうぜ」  はいはいと諦めて、歩いて帰ることにした。せっかくだ。今日はゆっくりと会話をしながら帰ろう。早速、今日聞いた愚痴について話してみた。 輝「今日さ、俺に対しての愚痴聞いちゃってさ、すごい萎えっちゃったんだよね。俺って怖い?」 浅「確かに怖いよ。他人だったら近寄りたくないよ」 輝「え、そんなに怖いの?」 浅「鏡見たの?目は細いし、顔にデカい切り傷あるし、地味に声低いし」 なんだろう。聞かなきゃ良かった。けどこうして二人で歩いて帰ったのは小学生以来だ。あの時は若かった。今も若いけど。なんだか、昔通った道で帰りたくなった。 輝「なぁ、昔通った街道で帰らない?そこのコンビニで何か食っていこうぜ」 浅「いいね。そっち方面で行こうぜ」  この時、俺の中は懐かしさと共に一瞬、不安が通り過ぎた。気のせいだと自分に言い聞かせて、俺たちはその道へと向かった。  
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