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元々世の中で言われているようなお父さんと口を利かないというような娘ではなかったし、妻よりも俺になついている感じていた。
俺が帰れば『おかえり』と必ず声をかけてくれたし、休みの日なんかはDVDを借りて2人で映画を観たりしていた。
それが今では俺が帰ってくるとエプロン姿で玄関まで走ってきて、俺のビジネスバッグを持って部屋の中へ。
部屋には綺麗に畳まれた洗濯物が置かれ、脱いだスーツはすぐにハンガーにかけてくれる。
晩飯も風呂もちゃんと用意されているし、最近では俺の昼飯用にと弁当まで作ってくれる。
これではまるで新婚夫婦のようだ。
はっきり言って、元妻はこんなことしてくれたことがない。
娘にここまでしてもらうのは気が引けた俺はそこまでしなくていいと言ったのだが、『私がやりたくてやってるんだからいいの』と聞いてもらえなかった。
それに毎日とても楽しそうにしているため、何も言えなくなってしまった。
まぁそのうち飽きるだろうと、俺も深く考えないようにした。
そんなある日のこと。
帰宅途中に元妻から電話がかかってきた。
もう2度と関わりたくないとは思っていたので無視しようとしたが、娘の母親には違いないし仕方なく出ることにした。
「もしも…」
「ちょっと、あんた菜々美(ななみ)に何したのよ!!」
俺の言葉を遮るように怒鳴られ、耳から離したスマホを睨みつけた。
「いきなりでかい声出すなよ。大体おまえは何言ってるんだ?」
「今日菜々美に会いにあなたの家に行ったのよ。」
「はぁ?おまえ何勝手なことしてるんだよ。」
「私はあの子の母親なんだから、会いに行ったっていいでしょ!だけど、すぐに追い返されたのよ。」
そんなの当たり前だ。
離婚の時に散々振り回しておいて、喜んで迎え入れてもらえるとでも思っていたのだろうか。
「それであの子最後に言ったのよ。『お父さんと2人で幸せに暮らしてるんだから邪魔しないで。離婚してくれてありがとう。』って。どういうことなの!?あなた菜々美に変なことしてないでしょうね?」
そんなことはしているわけない。
が、娘の発言は気になった。
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