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離婚して1ヶ月。
俺、田中智紀(たなかとものり)は血の繋がらない娘と2人で暮らしている。
なんでこんなことになったかというと、3ヶ月程前に突然妻から離婚をして欲しいと言われた。
なんでも俺と付き合う前から付き合っていた妻帯者の男が最近離婚したとかで、そいつと結婚したいから離婚したいとか。
二股かけられていたのに気づかず結婚したあげく、ずっと不倫されていたことにショックを受ける俺に、妻は追い撃ちを与えた。
高校生になる1人娘は俺の子ではなく、不倫相手の子供だというのだ。
妻の言うことを信じない俺に、DNA鑑定の結果を見せた妻。
そこには娘は不倫相手の子供だという検査結果が記されていた。
あまりのショックに、俺はしばらく何も考えられない状態だった。
15年間育ててきた子が実は血が繋がってないと言われても、赤の他人だと思うことなど出来なかった。
だからといって、何も知らなかった頃と同じように自分の娘だと言える自信もなかった。
今までの結婚生活がすべて嘘のように思えて、やるせない気持ちになった。
そしてこんな俺と暮らすより、娘を幸せにすると言っている不倫相手と暮らした方が幸せになるんじゃないかと思うようになった。
俺は離婚に合意し、親権も手放すことを決めた。
そして最初で最後、4人での話し合いの場で娘が言った。
『私、こんな自分勝手なお母さんと暮らしたくない!たとえ血が繋がってなくても、今まで大切に育ててくれたお父さんと暮らしたい!』
俺の目を真っ直ぐに見て、 力強く言った娘。
その言葉は純粋に嬉しく、それと同時に血が繋がってないからとウジウジ悩んでいたこと恥ずかしく思わせた。
まだ15歳の娘が自分のことをそんな風に思ってくれるなら、俺はこの子が巣立つまでしっかり育てようと心に決めたのだ。
そんなこんなで娘を引き取った俺は、妻がいなくなった家で娘と2人で暮らしている。
最初はきっとぎこちない感じになるだろうと心配していた俺は、まるで何事もなかったように普通にしている娘に驚いた。
いや、ちょっと変わったところもある。
それは娘が離婚した妻より、妻らしいことを俺にするようになったのだ。
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