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「わ、私……婚約者も恋人も、どちらも嬉しい、です」
包み込んだ腕の中で、かすかに身じろいだルリーシェが、私の袖口をちょんと引っ張った。
「ですが……できれば、なのですが。今年のうちは、まだ『王子様』とお呼びしたいのです。駄目、ですか?」
そして、続く言葉を私の手の甲にそっと手を重ねながら尋ねてくる。
けれど、重ねられた優しい手は、わずかに震えているのだ。
とても緊張している、とでもいうように。
その所作に軽い眩暈を覚えたが、何とか平静を装って静かに答えた。
「それは構わないが。理由を聞いても?」
「あの、私。ひそかにお慕いしていた頃、毎日、心の中で『王子様』と呼びかけていたのです。神のように美しいあなた様は、私の憧れで、崇拝の対象で……。私の想いが通じることは絶対にないと思いながらも、脳裏に面影を描いては、ずっと『私の王子様』と」
「……っ」
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