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「フレイ殿。お願いいたします」
「承知いたしました。
では、私は一度王宮へ戻り、各地の情報をまとめた後、シュギル様に御報告にあがります」
もう何を言っても、私が丘に向かうのを止められないと悟ったのだろう。
背後でロキがフレイに声をかけ、それに応じてフレイが王宮へと駆け戻っていった。
「ロキ。年下とはいえ、フレイはお前よりは身分が上のはずだが?
そのフレイを使い走りに使うとは、お前も偉くなったものだ」
「仕方がありません。緊急事態なのですから。
この場合、フレイ殿のほうが足も速く、情報が正確に手に入ります。申し訳ありませんが『使い走り』には適任でございましょう?」
親衛隊隊長を使い走りにしたことを、歩く足を止めずに揶揄すれば、さも当たり前のように、しれっとそれを認める発言が隣に並んだ相手から返ってきた。
「では、お前はそのままついて来い」
実際には、『申し訳ない』などとは露ほどにも思っていないに違いない相手に苦笑しながら、ともに丘の頂上を目指す。
打ちつけてくる風雨は、依然激しい。
荒れ狂う嵐に身を晒しながら、身の内にも同じく込み上げてくる荒れ狂う激情をずっと抑えかねている。
できるものなら、今すぐ神殿へと駆けつけたい。
しかし、そのためには冷静に現状を見極める必要があるのだ。
自然の脅威の前には無力でしかない自分。
そんな矮小な自身への言い訳を胸中で並べ立てながら、丘への道を黙々と進んでいった。
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