6 覚悟の重さ

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「いいえ。先般、神託を得るためのお籠もりから戻られた神殿長様からの通達をお知らせに来てくださったのです。 近々、神使(しんし)を呼び出すための儀式があり、その日取りが決まったこと。 そして、その日までに新たな生贄が見つからなかった場合、私の名が挙げられる可能性があるということを」 「何っ? 日取りが決まったのか! 儀式はいつだ?」 「次の満月の夜とおっしゃられていました」 「次の満月? もう、それほど日数が残っていないではないか」 なんということだ。 ルリーシェの(いら)えに、目の前に真暗き闇がおりてきたような錯覚を覚えた。 こんなに短期間では、新たな生贄が見つかる可能性はほとんどないだろう。 となれば、必然的にルリーシェの名が生贄候補として挙げられてしまう。 しかし、ならばザライアはなぜ、先程それを私に告げなかった? 神託がおり、儀式の日取りが決まっていることを。 ()せない。 だが、どのみち、同じか。 もう猶予などないことは、確かなのだから。 こうなれば、なんとしてもルリーシェの承諾を得なければ! 「――ルリーシェ」 強い意志を込めて、その名を声に乗せた。
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