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「よく聞いてほしい。私が、こうして君のもとにやって来たのは、この話をするためなのだ」
ルリーシェが私を見つめ返す瞳が、さらに真剣なものになった。
私の口調で何かを察したのかもしれない。
それに力を得て、同じように視線を絡め、口を開く。
「君が 、再び生贄となる必要などない」
ノルンという同性の友だちができたのなら、尚更、再びあの祭壇へ君をやるわけにはいかない。
「君が生贄とならずとも、創造神の加護を得る方法は他にもある。
君と私、ふたりで神に仕える身になればよい」
「……え?」
戸惑い、私の言葉の意味を図りかねている表情。
その気持ちは充分に分かっているが、蒼天色の瞳を真っ直ぐ見つめ、さらに言葉を紡いでいく。
「ともに――――私と、ともに歩いてほしい。
生贄となる道ではなく、この神殿で生きる未来を」
「……王子、様?」
心もとなげな、小さな声。
瞳を揺らめかせて私を呼んだルリーシェの手を取り、両手でしっかりと包み込んでから、もうひと言。
私の中では、もう既に決定事項となっていることを宣言した。
「私は、王太子の地位を捨てる」
王位など、君のためになら、いくらでも投げ出そう。
秘薬を飲み、君とともにある未来を、私は生きていく。
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