6 覚悟の重さ

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「シュギル様。それでは、お尋ねいたします。 あなた様がお求めになられている秘薬。それが人の身体(しんたい)にどのように作用する物であるのか、御存知の上での御所望でございましょうか」 ザライアの淡々とした(しわが)れ声。 それが、目深(まぶか)にかぶった黒衣のフードの中から問いかけとして発せられてくる。 秘薬を生成する者の責任として、最後に確認をしておきたいのだろう。 私の覚悟のほどを。 ザライアの言う、秘薬が人体へと及ぼす作用。 もちろん、承知している。 むしろ、それを充分に承知しているからこそ、私は秘薬を得たい。 建国以来変わらぬ、五体満足の者のみに与えられる我が国の王位継承権制度。 そこから抜け出し、神殿に(げき)として入る選択を実現するためには、我が身の一部を損なわねばならない。 加えて、武を(たっと)ぶ我が国の王族には、自傷行為が認められていないのだから、その作用を及ぼしてくれる秘薬は、いまの私にとっては必要不可欠。 「ザライア。全て、承知の上だ。 秘薬を飲むことで得られる未来をこそ、私は望んでいるのだから」 (いにしえ)から伝わる秘薬――――『聖水』。 虹色の水と伝えられているそれを飲み干せば、身体のどこか一部の機能が完全に失われるという。 虹色と伝えられているのは、その薬の効果は千差万別で、飲む者によって効果が表れる部位が違うから。 私にどのような効果が出るのかは、飲んでみなければ分からない。 が、私は、その賭けに乗りたいのだ。
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