6 覚悟の重さ

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英雄王に加護を与え、この地に王国を建国せしめた、大地の女神。 我らが(あが)めたもう神聖なるその存在と同じ、琥珀色の三つの瞳。 それが、眼前の美女の(かんばせ)で輝いている。 それを見て取れば、古き混沌の時代にこの地に御降臨なされた創造神であるのだと、疑う余地などない。 確かに、私自身、驚愕のあまり声を失ったが、奇しくも今日、私は多頭竜と接触している。 そのことが、この驚愕の事実をすんなりと受け入れる手助けとなった。 多頭竜の胎内で感じたものと同じ波長が、現在(いま)この部屋に充満しているのを感じる。 凄絶なほどに澄み切った、清浄な波長。 忘れもしない、かの神使と同一のものが、皮膚を震わすように突き刺さってくるのだから。 とすれば、謝罪するべきことがまだあるのだということにも、今更ながら気づいた。 「女神様。今ひとつお詫びをお聞き入れください。 過日、神聖なる御使(みつか)いに剣を向けましたこと、大変申し訳なく……」 「よい。そのことは構わぬ。 そなたが気にすることはない(ゆえ)(われ)がその後に伝えたであろう? 『多頭竜は一匹だけではない』と。 それよりも、本題に入るとしよう」 「……は」 謝罪の言葉は、その途中であっさりと遮られた。 実際、私が落とした青眼の首は再生していたのだから、謝罪に時を費やすのは無駄、ということか。
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