7 愛情と思慕の狭間で

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――濃藍(こあい)に染まった夜空に、星々が煌めく。 いつの間にか冷たさを孕むようになった風に吹かれ、白く明滅を繰り返す星々を、言葉もなく、ただ見上げていた。 まだ、夜明けには早い時刻。 だが、星空に浮かぶ膨らみを増した弦月(げんげつ)は、いまだその存在を見せつけるように白銀に輝きながらも、地平の向こうにその姿を隠そうとしていた。 「――あと三日、か」 ぽつりとこぼれ落ちた呟きが、風の音にまぎれていった。 早いような、遅いような。 そんな矛盾した感慨が、じわりと胸中に湧き上がってくる。 次の満月まで、あと四日。 つまり、私が神殿へと出向く夜は、三日後になる。 そして、あの夜から、ちょうど三つめの月が過ぎ去ることにもなるわけだ。 神の贄となることが決まっている『白の少女』を初めて()の当たりにした、あの日――――ルリーシェとの出逢いの夜。 あの運命の出逢いから三月(みつき)が過ぎ去り、季節がまた移り変わろうとしている。
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