7 愛情と思慕の狭間で

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――翌朝。 「シュギル様。それでは、私は、いったん宮に戻らせていただきます。もし御入り用の品があれば、ユミルかトールにお申しつけください。すぐに私に連絡がつくようにしてございますので」 「分かった。数日の滞在なのだから着替えさえあれば大丈夫だが、もし何かあればそうしよう」 王妃宮まで私に付き従い、身の回りの品を運んでくれたロキがそれらを部屋の棚に収納したのち、また宮へと戻っていった。 「兄上っ。このお部屋にお泊まりになられるのは、何年ぶりですか?」 「ん? そうだな。およそ10年ぶりになるだろうか」 「10年! そんなに経つのですか。へぇぇ。僕もひさしぶりにお邪魔しましたけど、何だか僕の部屋よりも広く感じますねぇ」 「それはそうだろう。お前の部屋と違って、ここは荷物が少ないのだから。 書棚ですら、空っぽだろう?」 きょろきょろと部屋の中を見回しながらのカルスからの問いに、宮から持ってきた書物を手に取りながら答えた。 ここは、初陣(ういじん)に臨んだ14の年まで、私が暮らしていた部屋。 いったい、どうしたことか。 私の軟禁場所を王妃宮にという願いは、意外にも、ごくあっさりと父上から許可がおりた。 しかも、滞在するのは私が以前暮らしていた部屋でよいという御言葉も、その時につけ加えられたらしい。 余りにもすんなりと聞き届けられたことに、かえって疑問が湧いてしまうが、ここが私にとって好都合な場所であることに変わりはない。 父上の御命令に従い、生贄の儀式を三日後に控えた今朝、この王妃宮へとやって来たというわけだ。 勝手知ったるここなら、脱出方法はいくらでもある。 加えて、昨夜、ロキと綿密な打ち合わせも済ませた。 数通りの策を練り、どんな突発的な事象が起ころうが対処し、神殿へと向かう手筈は既に整えてあるのだ。
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