191人が本棚に入れています
本棚に追加
「カルス。では、行ってくる」
「はい、行ってらっしゃいませ。お戻りになられたら、また数学を教えてくださいね」
「あぁ。それまで剣の稽古でもしているといい」
勉学を見てやっていたカルスをいったん自室へと戻し、身支度を整えてから謁見の間へと向かった。
父上に、呼ばれているのだ。
王宮に入れば、部屋に軟禁されたまま儀式の夜まで過ごすのだと思っていたが、どうもそうではなかったようだ。
今朝、王宮への到着と同時に父上からの使いが訪れ、謁見の刻限を伝えてきた。
私に、どのような御用件だろう。
まさか、生贄の儀式が済み次第、また出陣せよと言われるのであろうか。
どうする? もしも、出陣の御命令であったなら……。
「――王太子よ。そなたに命ずる」
取り留めのない思考を繰り返し、しかし結論を出せぬまま、私は父上の御前に跪いていた。
いったい、どのような御下命が下されるのか――
「妻を娶れ」
「……は?」
最初のコメントを投稿しよう!