7 愛情と思慕の狭間で

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しまった。 私の反応の直後、ぴんと張り詰めた空気が、瞬時に謁見の間を覆い尽くしていったのを感じた。 命令を聞き返されることを嫌う父上であることを、つい失念していた。 しかも、驚きの余りとはいえ、間抜けな言葉で聞き返すという愚行を私は重ねてしまっている。 これは、いつもの怒号が響き渡るな。確実に。 居並ぶ臣下の皆には申し訳ないことをしてしまった。 どう、ご機嫌を直していただこうか……。 「既に相手は、(われ)が見繕っておいた」 が、それは杞憂に終わった。 私の反応に片眉をぴくりと動かし、怒号を放つと思われた父上は、冷静に話を続けられたのだ。 「今宵より順次、顔合わせし、三日後には王太子妃と側妃(そくひ)を決定せよ――――以上だ」 「……っ」 あ……。 「父上……お待ち、ください」 「もう下がれ」と素っ気なく言い置いて口を噤まれた父上に、取り縋るように声をかけた。 これは……この御命令だけは、すぐに「(だく)」と返すわけにはいかない。
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