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「――シュギル様。あと少しの辛抱ですよ。我慢なされてください」
「あぁ、分かっている」
身支度を終えた私に、新たに入れたハーブ水を差し出してきたロキからの、いたわりの視線。
それに、短い応えを返した。
いま室内には、ロキと私のふたりきりだ。
カルスは迎えにきたユミルとともに自室に着替えに戻っている。
「シュギル様? お顔に『疲れた』と書いてありますよ。
ここを出る時には、それは胸にお秘めくださいね」
「……それも、分かっている」
からかいを込めた言葉が追加され、これには早口で返した。
女人たちとの会話に難渋している私の疲弊を、確実に面白がっているからだ。
「ふふっ。よろしくお願いいたします。
ですが、まさか国王陛下の御指示で組まれた宴がこれほどひっきりなしとは思いもしませんでしたねぇ」
「全くだ」
「今まで浮いた噂ひとつなく、女官にすら手を出さなかったシュギル様に親として業を煮やされたのか。
それとも、中原の制覇に関わる新たな戦略のためか……。
陛下の御心の内は、どちらでしょうか」
「九割の確率で、後者だろう」
礼装用の飾り剣の宝玉を磨きながらのロキの問いに、即答した。
考えずとも、分かる。
というより、宴に出てみれば、すぐに理解できた。
妃候補として引き合わされた三名の女人たちの顔ぶれを知って。
皆が揃って、沿海の国の姫たちばかりであったのだから。
二日前、父上から向けられた鋭い視線と冷たい物言いが思い出される。
『観念して、国のため、妻を娶れ』
私のためにと昼夜分かたず催されているこの妃選びの宴は、父上が海の要衝を押さえるための、覇王としての段階のひとつに過ぎない。
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