7 愛情と思慕の狭間で

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「ところでシュギル様。お茶会が終了したのちの手筈については、打ち合わせした通りということでよろしいでしょうか」 「あぁ、変更はない。ロキは、当初の指示通りに動いてくれ」 飾り剣を受け取り、身につけながら、王宮からの脱出についての段取りの確認を行う。 これが、ロキとの最後の打ち合わせだ。 ここ数日、どんな突発的な事象が起ころうが対処できるよう数通りの策を練り、神殿へと向かう手筈は整えた。 が、ここにきて新たな懸念材料もあるにはある。 「ただ、この後の茶会が延長になった場合だけが問題だ」 「左様でございますね。予定通りに終了しても、脱出の予定時刻と重なってきますからね。 まぁ、私の一番の懸念は、昨日から慣れない姫様方の相手で疲弊しきっているシュギル様に、果たして神殿へと向かう体力が残っているかどうかですが」 「ロキ……私で面白がるのは、もうやめろ」 私の衣服を整えながらのからかいの言葉に、眉をしかめて不平を露わにした。 確かに、この後のことを思うと気力がそがれていくが、それはそれだ。 「ふふっ。失礼いたしました。疲弊しているのは精神的部分だけでしたね。 では話を戻しますが、不測の事態でお茶会が延長になることもおありでしょう。その場合は――」 「――それで、兄上はどの姫がお好みなのですか?」 「……何?」 王妃宮の祭壇室で祭祀の開始を待つ間、隣に座したカルスが私の耳に唇を寄せ、小声で尋ねてきた。 が、尋ねられた内容に対しての反応が、少し遅れた。 カルスの問いが意外だったのもあるが、私の意識は別のところに向いていたからだ。 祭祀の主催者、ミネア様と並び立っている痩身の黒衣の男。 神官レイドの茶色の短髪がミネア様と全く同じ色だということに、今更ながらに気づいたのだ。
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