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「……なるほど。『散歩のついで』、でございますか。
それで、ここで朝を迎えられていた、ということですね?
朝食のお時間ですのに、宮におられないからお探ししましたよ」
ひとつ、軽く息をついてから告げられた、ロキの言葉。
その声の主が差し出す手を取り、黙って立ち上がった。
ここで寝ていた私の言い訳を繰り返しつつも、その言葉通りには受け取っていないのだと分かる言い方で、尚且つ『早く宮に戻って朝食を食べろ』と促されたからだ。
たぶん、今のやり取りで私が深夜に宮を抜け出したことにも気づいたのだろう。
理知的な光を宿す灰色の瞳には、あまりにも稚拙な誤魔化しようだったか。
全く、この乳兄弟(ちきょうだい)には、適わない。
「――朝食を召し上がられましたら、すぐに軍の司令部に向かわれますか?
身支度の準備は、既に整ってございますが」
宮に向かいながら今日の確認を受け、少し考える。
今朝は軍の凱旋式があるのだ。
「そうだな……いや、まずは王宮へ向かう。
ブランダル将軍は父上のところに伺候(しこう)し、報告をしているはずだろうから」
そうだ。ブランダル将軍にまず会わなくては。
会って話を聞こう。彼女のことを。
『白の少女』を捕虜として捕らえ、生贄に祭り上げた、その張本人に。
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