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「それでですね。僕が鼻をつまんでたら、母上が……」
「――これは、王子様方。
本日もお麗しくていらっしゃいますな」
「ブランダル将軍」
父王の謁見(えっけん)の間に向かいながら、朝食の薬草スープを頑張って飲んだというカルスの話を聞いている途中、聞き慣れた野太い声が割って入ってきた。
凱旋軍を率いて帰国してきたブランダル将軍だ。
私たち同様、既に凱旋式用の鎧を身につけており、黒瑪瑙(くろめのう)を埋め込んだ鎧が、大柄な体躯を良く引き立てている。
父上への戦勝報告が終わったようだ。
「ブランダル将軍。軍の引き上げ、御苦労でした」
軍においては私の部下ではあるが、軍人としての経験も年齢も先達(せんだつ)だ。
緊急事態の命令以外は、丁寧な物言いを心がけている。
「はい。今朝、全兵が無事に帰国いたしました。
これも、シュギル様の御活躍で勝利をおさめることができたからでございましょう」
「いや、私は……それより……」
「ブランダル将軍! 僕、将軍にお尋ねしたいことがあるのです。
多頭竜への生贄のことをお聞きしても良いですか?
どういう者なのです? 僕、とても興味があるのですっ」
「……っ」
私が尋ねようとしていたことを、カルスが代わりに聞いてくれた。
とても無邪気な笑顔で。
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