第1話 呼声

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「やっぱり出るのか。あそこは」 「信じないとは思うけど出る出ないというより、あそこは何かの出口なのよ。悪寒がする空気というか、霊気というか。それがどう自殺に絡んでるか知らないけど、それを感じた瞬間寒くなったというか怖くなったというか、とにかく縮こまって震え上がっちゃって友達を怖がらせちゃったことがある」 カムイコタン、神居古潭はアイヌ語で「神の村、神の居す場所」という意味だ。 そこに果たしてオキクルミが居るのかどうかは分からないが、実際は普通のなんてことないイシカリ川の急流を望む景勝地である。 オトエからアサヒカワにかけてサイクリングロードがずっと続いてて、そこの夜道を歩こうと誘われて嫌々ながらも行ったが、わたしがあまりに怖がるのでみんなそれ以上は進まなくなった。 あの時はまだトゥイエカムイサラナとも、出会ってはいなかった。だけどわたしの耳に、聞き分けられないほどの記憶の声が流れてきて、あの時ここはやばいと思いそして自分の特異な感覚を実感したんだ。     
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