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『でもわかるよ。君が彼に心惹かれていると同時に、恐れていることも。彼は燃え盛る一軒家のように危うい男だ。もしかすれば髪だけが灰色に見えるのは君だけかもしれない。髪だけがか、面白い症状だな...』
勝手にわたしの思考を追従して、目の前の男はわたしと同じように考え始めた。
まだ5歳のころに家が焼けたことがあった。
今までの生活が崩れ落ちていくのを見て、その時わたしは燃え盛る炎が灰白色に見えていることを理解した。
未だにわたしの色盲が生まれつきのものなのか、それとも火事の精神的外傷が創り出したものなのかはわからない。
これもトゥイエカムイサラナによってやっと物をカラーで見れるようになったが、未だに怖い人や物、特に炎が灰色に見えるという形で残っている。
『人間は見たいものしか見ることができない。それは君にも村泉ミラルにも例外ではない。彼が世界を恨み、全てが歪んでいると望んだんだ。君が、世界は白と黒で出来ていると望んでいたように』
そうして新年はホットミルクが冷めるように静かに始まった。
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