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「そいつが俺のことを呼んだんだ。村泉の息子よ、と。2週間以内にカムイコタンへと参り、私の事業に助力を頼みたい、と」
「すごいね、鳥が喋ったんだ」
わたしにとっては動物が何らかの意思を伝え、あるいは今テーブルの上でジャム入りの紅茶を飲んでいるウサギが喋ることに関しては何の不思議もない。
でもミラルにとっては動物は会話して意思を伝えるようなことはできないもののはずである。実際彼に、テーブルの上に座るウサギは見えていない。
「そう感じただけだ。ただ鳥は嗄れたような声で歌いながら踊っていた。...ように見えた」
「そういう夢でも見ていたんじゃないの?病院で」
「はっきりと覚えてるよ。飛び立った瞬間俺が後ろ向きに倒れて、谷宮が駆けてきてくれたとこまで。こうとも言っていた、この鹿の王国が崩壊する前に決断されよ、とも」
「鹿の王国……つまり北加伊道が? キッパリというのね、預言者みたいに」
そうわたしは言ったが、テーブルの上でトゥイエカムイサラナは興味を示したらしく頭を高く上げてミラルを見た。
呆れたように目を閉じるとミラルは7:3に分けられた長い前髪を、右手でかき上げる。
一年前から気になっていたのだけど、その右手のメタルバックルの腕時計の下に巻かれた黒い布はなんなのだろう。
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