壱ノ巻

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とある村に、一人の薬師がいた。 その薬師の腕は確かで、近くの村の者は、こぞってその者の庵へ足を運ぶそうな。 どんな病もたちどころに治し、助けを求められれば、自ら出向いた。 いつしか、その薬師の煎じる薬は、万の病を治すと言われるまでになった。 しかし、その薬師は、他の薬師にあまり好かれてはいなかった。 なぜなら、その薬師は、齢15にも満たない女であったからだ。 海の近くの小山の麓に、たった一人で住む、その女を、他の薬師はまるで化物のように扱っていた。 しかし、彼女は毎日、人を救い続ける。 その功績は、周囲の村にも鳴り響き、留まることを知らないかのようだった。 そんな、ある日のこと。
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